Leica Summicron 90mm f/2 2nd Review
カメラの標準的な画角は35mmか50mmと言われています。それは人間の眼で見ている視野に一番近いということからです。
35mmは何となく見ている時の、50mmは何かに注目している時の視野なのでこの2つの画角のレンズは使いやすく、多くの種類が出ています。
ライカもその通りで35mmと50mmのラインナップが多いです。どちらかというと35mmの方が「ライカの標準レンズ」という印象ですが、その話を始めると大変なことになるのでやめておきましょう・・・
話は逸れましたが、ではその次に多くのレンズが出ている画角は?という問いはどうでしょうか。ライカといえばスナップの印象が強いですし、28mmと思うかもしれません。
ですが、意外にも90mmの方が多くのレンズが出ているのです。
Elmar(エルマー)に始まり、Elmarit(エルマリート)、Tele-Elmarit(テレ・エルマリート)、Summarit(ズマリット)、そしてSummicron(ズミクロン)というラインナップがあります。
今回紹介するのはSummicron 90mm f/2の第2世代モデルです。1963年から1976年まで生産され、およそ5400本ほどが出荷されています。この個体は73年のものです。
普通、90mmのレンズはf/2.8が多いのですが今回はf/2、しかも45年前のレンズはどんな写りなんでしょうか。
まずは外観から。
でかいです。ひたすらにでかい。ものすごい主張です。ただ、一眼レフ用の90mmと同じぐらいです。ライカの他の90mmレンズが小さすぎるというので際立ってしまうのかもしれません。
製造時期によっても異なりますが、これはアルミ鏡胴でヘリコイド部分は真鍮だと思われます。ブラックのクロームメッキもきれいで金属感はものすごいです。
ピントや絞りのローレット加工(ギザギザになっている加工)の細かさも注目です。ペイント部分は一回彫り込んでからペイントしてあります。
前回紹介した、Summiluxの初代もそうですが60~70年代のライカレンズは素材、加工へのこだわりが物を見ると凄く分かります。単に写せれば良いのでは無く、レンズそのものを工芸品としているような作り込みです。
大きいのはデメリットかもしれませんが、f/2で撮ることができるのはこのレンズだけです。実際の写りをご覧下さい。M9に装着しての撮影で全てJPGの撮って出しです。編集はしていません。
帽子のつばにピントを合わせると、頭の部分がボケています。開放(f/2)で撮るとピント面以外はこういった感じになります。「被写界深度が浅い」とか「ピントが薄い」と言われるものです。
下の写真は少し絞って撮りました。f/4ぐらいです。
適度なボケと解像度が良いですね。色味も含めて、オールドレンズらしい写りとも言えるかもしれません。
とはいえ、解像感はしっかりあるので革や金属の質感はとても良く出ますし、暗めに撮ると雰囲気が出て良い感じ。とても40年以上前のレンズとは思えない描写です。
50mmでは中々出せない、モノや人にフォーカスした写真には最適な画角とも言えるかもしれません。
店内からではありますが、外も撮ってみました。
絞ってf/8で遠景を撮ると下のような感じです。
最後に開放(f/2)からf/16まで、ボケの具合をテストしてみました。
f/2
f/4
f/8
f/11
f/16
レンジファインダーでの90mmはピント合わせが結構大変でしたが、一眼レフと違って全体の中で切り取ることが出来るのと、実際に画面で見た時に結構な感動があります。
35mmや50mmが日常を切り取るレンズとすると、90mmは非日常を写し出してくれるとも言えると思います。
M Typ240以降のモデルであれば、画面を見ながらピント合わせができるのでより使いやすいかと。
手にした時は「でかい、重い」という感じでしたが実際に構えて撮っている時はそれほど気になりませんでした。現行のSummilux 50mm f/1.4 ASPHも結構な大きさと重さなのでそのあたりのレンズをお使いの方は違和感なく使えると思います。
手軽さで言えばTele-Elmarit-M 90mm f/2.8が間違いなく勝ります。あれほど小さな90mmはありませんので。ただ、使っていて「もう少し明るかったらなぁ」と思う場面もあると思います。
現行のAPO-Summicron 90mm f/2 ASPHの描写はもちろん素晴らしいですが、お値段も素晴らしいので、その半分以下の価格と考えるとこのレンズも候補に入るのではないでしょうか。
Leica Summicron 90mm f/2 2nd 【OH済み】